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2011年06月 アーカイブ

2011年06月04日

デジタル世代の情報ギャップ

自営SNSで書いた記事(2007-02-08)を転載する。



~小さな箱から抜け出よう~

 社内外の人々と接して常々思うのは、世代間の情報ギャップである。40代以上の経営に関与する権限と責任を持った人(以下幹部社員)と第一線で働く若い世代(以下デジタル原住民)との間にある意識と情報のギャップである。

1.デジタル移民とデジタル原住民の壁

 シリコンバレー企業では世代を超えて同じ仲間として老若男女が一緒に働くのが基本であり、仕事を離れた付き合いも多い。そのため意識や情報の共有が自然となされる。しかし、いまの日本のビジネス社会ではどうだろうか? 仕事も個人生活もデジタル世界なしには語れない時代、デジタル移民になりきれない幹部社員層とデジタル原住民の間には大きな断層がある。それが組織で仕事をするときの障壁になっているのだと思う。

 これを解消する手段として有効なのが、上意下達から参加型、情報共有から感情共有型への移行と穏やかな人間関係の構築をサポートすること、流行の言葉でいえばSNSインフラとそこへの参画意識の醸成であるが、それは別の機会に述べたい。まず、「意識と情報の断層がある」ということの共通認識をしたい。なぜそういう思いを深めたのかということである。

2.YouTube知っていますか

 昨年、請われるままに「ソフト変革の波」の一環として、営業プロセス変革や情報感度、経営マインドなどの講演をした。その前提知識として、いま世の中で注目されているバズワードの意味するところや新しいビジネスについて紹介した。その結果、私にとってショックだったのは「平井さんの話に出てくる言葉の2~3割しか知りませんでした」といったアンケートでのコメントであった。同時にそうした謙虚な意見に感謝した。

 YouTubeやMySpaceという時代の寵児的な存在さえ知らない人が、40代以上の企業の幹部(多くが情報に鋭敏な営業)のなかで9割も占めていたのには正直驚いた。これからのITソフト・サービス事業に与える影響を議論できるような状態ではない。WikiにしろSaaSにしろ、それらは現象であって、大事なのはそれを支える技術と生み出される市場であり、社会・経済的波及効果であるが、それを議論できる状態ではなかった。

3.LAMPを知っていますか?

 こうした驚きは最初ではない。二年前にSE幹部社員向けの「商談推進研修」の講師を、延べ30回、500人くらいを対象に務めたが、そのときに同じようなショックを受けた。たとえば「LAMP」という言葉を知っている人は一割もいなかった。「ビールゲーム」を知っている人は皆無に近い…という事実に直面して哀しくなった。

 LAMPは、Webサービス開発・運用環境(オープンソースの代名詞的存在)であり、Yahoo!や楽天のインフラの一つ。Beer Gameは、経営の基本である「全体最適」の重要性に気づか
せるために、新人研修でも実施しているもの。デジタル原住民は知っているが、幹部社員は知らないという非可逆現象が起きている。多忙のため研修に参加したり、人と対話することが少なく、学習の機会がないのではないか。売上の5%は社員教育に再配分して、研修を維持・強化するのがマネジメントであろう。

4.デジタル原住民は

 いわゆる76世代の前後を先頭集団としてデジタル原住民の人口が増えてきた。その世代の人は、先ほどのYouTubeやLamp(これはIT分野の人中心)は当然知っている。

 先月の「Web勉強会」に来ていた大手航空会社担当の、26歳の営業の人と2時間近く立ち話をした。YouTubeやWikiどころかParis HiltonやBritney Spearsも、昨年の新人たちと同様に知ってい
た。彼とは話が弾んだ。対話ができた。そんな組織風土が大切だと思う。それがJQAという経営の教科書が教えることの一つでもある。

5.デジタル移民の勧め

 オフィスでワイワイガヤガヤ(ホンダの企業文化)だけでなく、デジタル時代のネット社会での見知らぬ人たちとの世代・組織・国境を越えたワイガヤが、日本でもデジタル原住民にとっては当たり前になってきている。

 彼らとは違う世界を歩んできた幹部社員であっても、デジタル移民になって、デジタル原住民が話す言葉を理解する努力がもとめられる。そして、双方が対話できる組織は強くなる、ということを認識すべきである。そうした認識をもたずに人材(デジタル原住民)の採用や育成を論議することは虚しい。

 このことを経営とITに係わるコンサルタントも、十分に認識して、顧客企業のお客様(企業・消費者・住民)の視点で考えていかなければいけない。自分の得意分野を強化するとともに、これまで以上も広い視野をもって、現実と仮想の両面世界でのリレーションを構築し、情報の発信と意見交換をする習性が求められる時代である。

 ○○専務もおっしゃっているように「○○○グループ以外の人の名刺を何枚持っていますか?」が問われる。そして、いまや名刺だけでなく、ネットで気軽に意見交換ができ、相談できる人、その道の識者を何人知っていますか?が問われる時代であろう。

 記 2007.02.08

〔参考〕
・「小さな箱から抜け出よう」
 http://groups.google.co.jp/group/out-of-the-box
・「箱ーGetting out of the box」
 http://home.elmblog.com/management/001044.html

≪余談≫
 「家に帰ったら奥さんや子供さんにYouTubeを知っているか聞いてください」と件の講演のあと参加者に言った。ある企業の社長は、早速奥さんに携帯電話をかけて聞いた。「平井さん、女房は知ってましたよ。それどころか子供と一緒に良く見ているそうです!いやーまいった」という。この人は経営者の資格がある、すぐ行動に移して知らないことを知る努力をされている。研修でかならず参加者に聞くのは「知識とはなんですか?」「情報とは?」という質問である。意外とみんな答えられない。それを知らないでどうして「情報共有」とか「知識エンジニアリング」が組織にとって大事だ、といえるのだろうか? みなさん、「知識とは何か」を考えてみてください。